自転車ツーリングキャンプ2016


完結編

 まさに、嵐の夜だったのです。
 22時くらいから、雨と風が激しくなりました。
 疲れたこどもたちは眠れていたようですが、テントは風で大きく揺れていました。

 5時起床。

 しかし、とても外に出ることはできません。天気予報を見ると、7時ころには一気に回復しそう。
風雨が厳しい中ムリをするより、ここは待とうということで、テントの中で朝食をすませ、出発準備を整えることにしました。
 しかし、この時間帯の風はものすごく、テントは大げさではなく、ほんとうに吹き飛ばされそうになりました。まるで三日月のようにゆがむテント。きっと中にこどもたちがいないと、間違いなく飛んでいってしまったでしょう。
 朝食をすませ、雨が小雨になったところで、テントの撤収に入ります。しかし風はおさまりません。一斉に外に出ると、テントはふっとんでしまいそうです。そこで1つずつテントを片付ける作戦にしました。まず、こどもは中に残ったまま(おもりの役割です)荷物だけ3人いる相談員でリレーして車に入れます。次に相談員がテントを外からひっぱって確保し、こどもたちに一気に外に出てもらいます。こどもたちが出たとたん、テントはまるでふきながしのように泳ぎますが、人手が増えたところでテントをエイヤッとたたんでいきます。ひとつ片付けることができると、相談員3人にこども4人の手が加わります。他のテントも同様のやり方でどんどん片付けます。

 このとき、天竜川の対岸にものすごく鮮やかな虹が出ていたのをみんなで見ました。
「すごいきれい!」
作業の手を動かしたまま誰ともなくいいます。本当にきれいでした。それに、そのことを口にできるこどもたちはすてきだなと思いました。

 出発は予定より約1時間遅れとなりましたが、そこにたどり着けたこどもたちはえらいものだなと思いました。その後、天気予報通り、天気は一気に回復。青空の下でのツーリングとなりました。
 駒ヶ根市から飯島町、中川村、松川町豊丘村喬木村・・・とすすみます。





 おおむね1.5キロ平均の走行ごとに小休止しして景色を楽しみ、給水、チームによっては運転手交代をします。このへんは昨日もしていますのですっかり馴れた動きになります。
 南下しているので、進行方向右側に中央アルプスが見えます。新緑の向こうに見える、雪をかぶった中央アルプスは美しいものです。
 朝、あれだけ悩まされた強風は幾分かやわらぎ、5月の薫風となって私たちの体を吹き抜けていきます。雨が空気中のほこりを落としてくれたのでしょうか、景色はきらきら輝いて見えるようでした。




 ゴールのほっとアップルにたどりついたのは、13時45分ころでした。計画より1時間程度の遅れです。それは、そのまま風雨による出発時間調整の遅れとほぼ同じでしたので、走行そのものは計画通りできました。
 終盤、体調が思わしくなくなった子、弱音が出てしまった子がでました。のこり3ターン(ゴールまで5キロくらい)といったところでしょうか。体調が思わしくなくなった子は、車で移動となりました。同じチームの子が弱音が出てしまったのですが(3人で2台の自転車を交代で使うチームでしたから、休憩なしとなったわけで、そのことで不安になってしまったのでしょう)、その子はのこりのターン、ぜんぶペダルをこいで責任を果たすことができました。ゴールのその時の顔の晴れやかさといったらありませんでした。この子は、増えた責任と不安を自分の力で乗り越えたのです。確かな手ごたえを感じたことでしょう。


 体調が思わしくなくなった子は、昼食はしっかり食べることができました。トイレにいって、その後は元気にすごしました。よかったです。しかし、これが登山だったら、車で移動してみんなといっしょにゴールできる、という選択肢はありえませんでした。次の機会は、なんとかして体調を維持し、みんなとの協力をやりとげることができるといいです。
 さて、ほっとアップルで雨でびしょびしょになったテントを干しながらお弁当を食べます。お日様の力は偉大で、ものの30分でテントは乾いてしまいました。


 テントをたたんで、温泉で入浴。
 センターにもどって、片付け作業とふりかえり。
 ひとりずつ、「荒谷の丘に集いし者は、いかなる時も助け合え」の姿を感じた場面と、美しいと感じた景色の発表をしてました。
 16人それぞれの発言の中で、71キロにおよぶツーリングの出来事がいろいろとよみがえったわけですが、美しい景色の発言の中に「一番後ろから見ていて(中学生は交代で隊列の一番後ろを確保する役割を担っていました)、最初の方はばらばらだったみんなの列が、きれいに一列になって進めるようになった時、ああ、いいなって思いました」という言葉がありました。とてもすばらしい言葉だなあと感心しました。
 発表が終わったあと、朝見た嵐の中の虹にちなんで、みんなで「虹」を歌いました。大きな声で歌えました。伴奏をしていて、驚き、またうれしくなりました。最後にジュースで乾杯。みんな、ありがとう。
 2016年の自転車ツーリングキャンプ、事故無く、たいした怪我もなく、こうして終わることができました。
(くずてつ)

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